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TOCコミュニケーション広場
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[整理No.012] 投稿 Uさん(匿名)
TOCにおける先入れ先出しの重要性
(注) 下記文中の「斜体」の文章:Uさんの質問、「太字」の文章:小林英三よりの回答
Uさん、
メールを有難う御座いました。遅くなりましたが、下記のようにお答えいたします。
いささかでも、お役に立てば嬉しく存じます。
基本的に感じられたことは、Uさんは、「現状の問題点」を正しく把握されていると言うことです。多分、ここで、TOCについてのご理解を、一度、整理されては如何でしょうか。それには、手前味噌ですが、拙訳の「シンクロナス・マネジメント」(アンブル、スリカンス著、ラッセル社刊)を、「精読」して下さい。きっと、役に立つと思います。また、TOCをインプリメンテーションされる場合、同じく拙訳の「制約理論(TOC)のインプリメンテーション」(ウオッペル著、ラッセル社刊)も、とても、役立つと思います。
これらの本を使い、まず、周囲の(影響力のある)人たちと、TOCの輪を広げるようになさっては如何でしょうか。
また、このほかにも、下記のような文献を、多くのご同僚の方々が読まれたらよいと思います。
【ともかく読む本】
ザ・ゴール ダイアモンド社
【概要把握】
- 米国製造業復活の秘密兵器 TOC革命―制約条件の理論 稲垣公夫(著)JMAM
- ゴールはどこへ消えた?―TOCが2時間でわかる! toc‐japan.com work bench (編集)ラッセル社
- 制約理論(TOC)についてのノート 小林英三(著)ラッセル社
- 在庫が減る!利益が上がる!会社が変わる!―会社たて直しの究極の改善手法 TOC 村上悟(著),石田忠由(著)中経出版
【日本の事例】
- 在庫ゼロリードタイム半減TOCプロジェクト―究極のムダとりに挑んだ3社の実例 村上悟、他(著)中経出版
【TOCのインプリメンテーション】
- 制約理論(TOC)のインプリメンテーション マーク・J.ウォッペル(著)ラッセル社(小林英三訳)
- TOC入門―「実践者のための」導入ノウハウ・手順 村上悟(著) JMAM
【理論書】
- シンクロナス・マネジメント-制約理論(TOC)は21世紀を切り拓く M.L.スリカンス他(著)ラッセル社(小林英三訳)
- 制約管理ハンドブック―競争優位のTOC戦略 ジェームス・F. 3 コックス他(著)ラッセル社(小林英三訳)
質問
TOCを適用するには先入れ先出しが行われていることが大前提なのでしょうか?
またうまくTOCを適用できたところはどの程度先入れ先出しが徹底されているのでしょうか。
TOCでは、基本的に、「状況の許す限り、できるだけ、受注生産を行う」ということを前提にしております。見込生産は、いろいろな視点から考えて、行うべきではない、と考えます。
Bill Dettmer、Eli Schragenheimは、"Manufacturing at Warp Speed"(拙訳で、近々、出版予定)の第7章で、以下のように書いています。
引用
最も望ましい状況は、受注生産で生産できる状況です。そうでない場合に比べ、在庫管理は単純になり、費用もかかりません。さらに、営業部門も受注生産で顧客に納品できるほうがやりやすいでしょう。しかし、DBRがサイクルタイムを短縮できるにしても、どんなケースでも、受注生産を可能にするほどには、サイクルタイムを短縮できるとは限りません。ですから、常に達成できるとは限りませんが、できるだけ受注生産を実現しようとすることを目標とすべきでしょう。
完全に受注生産にすることができない場合には、見込生産の量をできる限り小さしようと努力すべきです。
こう考える理由の一つに、「需要予測は当たるはずがない」と考えるからです。そして、生産するものは、顧客からオーダーのあったものだけにする、という基本原則を持ちます。こうして生産資源を、顧客が買って下さるものだけに集中し、できるだけ短い納入リードタイムで、納期通りに納品することを重要視します。この一連の流れのなかで、オーダーの優先順位設定は重要です。そして、基本的に、先入先出を前提とします。
もし各工程で先入れ先出しが行われ,中間製品の順番が他工程の都合により勝 手に変えられることが無ければ,後は各工程間の車間距離を徐々に詰めていけば自ずと工程間中間仕掛が減り,停滞時間が減少し,結果生産リードタイムが短縮されることは容易に理解できます。
Uさんは、すでに、基本原理を正しく理解されています。まったく、仰る通りです。
しかし我々の工場では工程毎の能率,製造ロット,操業などを重視するあまり,慣例的に一週間の範囲内で作るものの順番を変えて良いことになっていて(ひどいときには1週間以上先の予定のものを先食いしたりすることも)もし工程が遅れたら土日(本来週休二日)で取り戻すという悪習が染みついてします。
TOCでは、これは、明確に、除去すべき「方針制約」です。多分、Uさんは、「工程毎の能率,製造ロット,操業などの重視」は、制約資源以外では、スループットを増大させない、と言う意味で、まったく、無意味であるとお考えになっておられると思います。この方針制約は、実は、「スループットを増大させない」どころか、スループットの増大を妨げているのもご存知でしょう。まず、「工程毎の能率,製造ロット,操業などの重視」の意味するところ(スループットの増大を妨げているという事実)について、上層部を含めて、コンセンサスを形成されたら如何でしょうか。そして、それに変わる、TOCの業績測定尺度を、公のものとするところから、TOCのインプリメンテーションを開始されては如何でしょうか。
もちろん中・長期のスケジュールも発行されるのですが生産ライン全体を通して一元化された唯一の製造順序というものが存在せず,一週間単位で、ざくっと見るとだいたい守られているといった感じなのです。
もし、中長期のスケジュールが、需要予測に基づくものだとすれば、それは、 あくまでも、資源のキャパシティが十分であるかどうかの確認に止めるべきだと思います。もし、それが、実際の確定オーダーに基づくものなら、制約資源のMPS作成の資料として貴重です。
みんな問題があると感じつつ,工程単位での能率を最優先するという方針があり,長年今のやり方でなんとかそれなりにやってきているために,このある意味で柔軟性のあるやり方から抜け出せなくなっています。
「工程単位での能率を最優先するという方針」が、いかに、業績を損なっているかについて、Uさんと同意見の仲間の輪を大きくする必要があります。そして、それを、工場の経営層と共有しなければいけないと思います。
後工程の要求日がころころ変わることが分かっているため,各工程は欠品への恐怖から,大量の在庫を抱えることで自らを保護しています。
TOC/DBRでは、制約資源の基準生産計画(MPS)は、顧客オーダーの要求をすべて充足し、かつ、制約資源のキャパシティを念頭において作成されますが、このMPSが「神様」です。そして、他の資源は、それに従属する「僕(しもべ)」です。誰が、どのような理由で、どのような権限に基づき、後工程の要求日をころころ変えるのでしょうか。後工程が制約資源でない限り、そのようなことを許してはいけません。
またこの状況によりボトルネックが次々と移動するように見え実際はどこなのかもなかなかつかめません。
コックスは、「制約管理ハンドブック」の中で、能率を優先して大きなロットを投入すると、蛇が大きな獲物を飲み込んだときのように、ボトルネックが次々と移動するように見える、と書いています。まず、確定オーダーに対応するもの 以外の原材料の投入を止められたらいかがでしょうか。
人による作業が多く生産能力を定量的に把握することも困難です。申し遅れましたが我々の工場では製造ライン上を2つ以上同じ中間製品が続けて流れることはまずありません。たとえば組み立て工程においては,部品数,サイズ,組立方 が異なるものが次々と流れてきます。本来はだからそこ安易に順番を変えることはしてはならないはずなのですが。
事情がよく判らないのですが、人による作業が多い場合、多分、多くの作業員の方々を、できるだけ、多能工かすることは、よいことだと思います。「本来はだからそこ安易に順番を変えることはしてはならない」は正しいご理解です。工程能率、作業能率を無視し、さしあたり、多能工の柔軟な配置を念頭に、確定顧 客オーダーの納期厳守を最重要目標にされてはいかがでしょうか。
また、「人による作業が多く生産能力を定量的に把握することも困難です」に ついてですが、ある特定の人の、特定のスキルがボトルネックになっている、などということも起こり得ます。作業員の方々を対象に、「スキル・インベント リー」を洗い出し、「多能工の柔軟な配置」がどれくらい可能か、もみ極めておく必要があると思います。
我々にとっては"先入れ先出しを崩すことで各工程の能率をキープするやり方 が生産管理の基本で,また改善活動にとっての最大の制約になっています。
「"先入れ先出しを崩すことで各工程の能率をキープするやり方"が生産管理の基本」であるという、誤った能率重視を打破されて下さい。とても、重要なことだと思います。そして、同時に、忘れてはならないことがあります。それは、「"先入れ先出しを崩すことで各工程の能率をキープするやり方"が生産管理の基本」を置換する、TOCの概念に沿った、新しい「生産管理の基本」を、生産組織の中で、「公(おおやけ)」のものとして定着させることです。
ご健闘をお祈りいたします。
小林 英三
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